見ることは宝物。見た分だけ自分に返って来て、世界が広がる。

スペシャルインタビュー:篠原ともえさん(アーティスト、デザイナー)

 

Interview: Satoshi Shinkai, Photos: Tatsuro Kakishima (Pointer), Stylist: Renju Osono, Hair & Make: Yoko Suemitsu
撮影協力:東京都写真美術館
※1・※2は「TOPコレクション たのしむ、まなぶ 夢のかけら」(2018年8月11日〜11月4日)、※3は「マジック・ランタン 光と影の映像史」(2018年8月14日〜10月14日)での展示作品です。現在はご覧いただけません。

 


 

1990年代後半に個性的なファッションとキャラクターで“シノラー”ブームを巻き起こした篠原ともえさん。近年は、衣装デザイナーとしても活躍、そのマルチな才能が注目を集めています。プライベートでも様々な芸術に触れることが多いというアート好きの篠原さんに、東京都写真美術館をめぐりながらアートへの思いを熱く語っていただきました。

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美術館は岐路を教えてくれる大事な場所

東京都写真美術館といえば、2013年に観たマリオ・ジャコメッリの写真展がすごく心に残っています。モノクロのチラシに一目ぼれして足を運んでみると、真っ白い空間の中にジャコメッリの白黒の写真が浮かび上がるように展示されていて、まるで宇宙空間に浮遊しているような感覚になったんです。今でもその時の胸のときめきを鮮明に思い出せる位感動しました。写真美術館というだけあって、ここの写真展示は素晴らしいですね!

 

東京都写真美術館東口(恵比寿側)

 

今回改めて美術館を回ってみて、まず大好きな植田正冶さんの大きな作品が目に飛び込んできて、すごく気持ちが上がりました! 案内していただいた「マジック・ランタン 光と影の映像史」展(〜2018年10月14日まで)は、映像の歴史を学びながらも、江戸時代の写し絵や、子供心に返るおもちゃみたいな装置、さわれる模型もあって、大人の心もくすぐる展覧会でした。「TOPコレクション たのしむ、まなぶ 夢のかけら」展(〜2018年11月4日まで)は、ジャンプしてる写真や思わず笑ってしまう写真などが、テーマごとに年代も作家も自由に展示してあって、導き方も素敵。特に印象的だったのは最後に展示してあった緑川洋一さんの「《星ふる夜》〈幼かった日〉より」。一瞬で目と心を持っていかれました。私も趣味で天体写真を撮り続けていますが、これは理想形。1951年にこんな作品を作った方がいたなんて、さすがですよね。私はアート作品を見る時は、楽しむ気持ちと同時に実はジェラシーがあるんですね。「私だったらこう撮るな」と気持ちが掻き立てられる。そのジェラシーが沸く時って作り手としてすごく刺激を受けている瞬間。私にとって、美術館は来るたびに岐路を教えてくれる大事な場所ですね。

 

緑川洋一《星ふる夜》〈幼かった日〉より 1951年 東京都写真美術館蔵 ※1

 

自分のアーカイブが作品に反映される

私が星を撮るようになったのは、高校生の時に天文部に所属したのがきっかけです。最初はフィルムで撮っていたのですが全然うまくいかなくて。現在はリコーのGRを10年位前から愛用しています。長時間露光が出来て、写真をリアルな感じで撮ってくれるカメラですね。すごく相性が良くて、旅には欠かせない存在です。私はいいカメラで写真を撮ろうではなくて、どうしたら自分らしい写真になるかって楽しみ方をしています。

 

東京都写真美術館 図書室

90年代ってコンパクトカメラブームがあって、Konica BIG mini を片手に日常を撮ることに夢中になりました。16歳でデビューした時は見るもの全てがキラキラしていて、それを全部残したくて常にシャッターを切っていました。フィルムからデジタルになる時に数えてみたら5万枚位あったんですよ(笑)。若い時は自分の感じた感情がそのまま作品になると思っていましたが、やっぱりデザインすることを職業として気持ちを切り替えた時に、自分のアーカイブが作品に反映されると思うようになりました。美術館にも頻繁に足を運ぶようになり、西洋の印象派も見れば、浮世絵や写真展、バレエ、歌舞伎も見ます。多ジャンルに触れることで自分の好みが浮きだってきますし、見ていない世界は表現できない。ですので、見ることは宝物と思っているんです。見た分自分に返ってきますし、世界を広げてくれる。どんなジャンルでも自分らしく見るようにする人生を送りたいですね。

ものづくりのDNAを信じたい

最近すごく好きなのがモノクロです。私は元々ファッションでも色のある世界が大好きだったのですが、一方で幼少の頃からモノクロのスケッチやデッサンをいっぱい描いていて、2018年9月にアートディレクターの池澤樹さんとコラボレーションさせて頂いて、初めて原画展を開催したんです。メインのアートワークはまるでデッサンのようにメイクをして、これまでに無い撮影になりました。私自身が絵そのものと錯覚する様な池澤さんのアイディアはモノクロの世界を立体に飛躍させる斬新な作品でとても刺激を受けました。いつか私もファッションでもモノクロで力強いデザインに挑戦したいですね。

祖母が着物のお針子だったこともあり、ものづくりのDNAが私の中にも宿っていると信じています。芸能もデザインの仕事も全部私の表現方法になっています。将来デザインと社会を繋げられるようなアーティストを目指して、まだまだ勉強中です。

篠原ともえ(しのはら ともえ)

1979年東京都生まれ。1995年に16歳で歌手デビュー後、自身のアイデアによるデコラティブな“シノラーファッション”が一大ムーブメントを巻き起こす。その後もタレント、衣装デザイナー、歌手、女優、ナレーター、ソングライターなど幅広い活動を展開。近年は天文を愛する“宙(そら)ガール”としても活躍し、2018年には内閣府主催の宇宙開発利用大賞選考委員に抜擢されている。2018年11月8日(木)〜2019年3月3日(日)東京ドームシティTeNQにて、宇宙をテーマにした初のデザイン展「篠原ともえ STaR☆PaRTY 星と宇宙のデザイン展」を開催。https://www.tokyo-dome.co.jp/tenq/event/exhibition-15.html

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