スペシャルインタビュー:香取慎吾さん(タレント、アーティスト)
Interview: Tomoko Yabe, Photos: Tatsuro Kakishima (Pointer), Hair & Make: Tatsuya Ishizaki
撮影協力:東京都現代美術館
約3年にわたる大規模改修工事を経て、2019年3月にリニューアル・オープンした東京都現代美術館に香取慎吾さんが登場! パリ、東京で個展を開催するなど現代アーティストとしても活躍する香取さんは、以前プライベートでも東京都現代美術館に来られたことがあるそう。様々なアーティストたちとのエピソードや、ご自身のアートとの向き合い方などについて、じっくり語っていただきました。
2018年秋に「ジャポニスム2018」の公式企画として、パリのルーヴル美術館地下ホールで初めての個展「NAKAMA des ARTS」を、2019年3〜6月には日本で初の個展「BOUM!BOUM!BOUM!」を客席が360度回転する劇場、IHIステージアラウンド東京で開催し、いま夢が実現できている時だなって感じています。
そして、個展後に初めて訪れた美術館が、この東京都現代美術館なのですが、いやぁ、楽しい! 基本的には自分で絵を描くのも好きなんですけど、美術館でいろんな作品を見るのも大好きなんです。急にやる側になったから見方が変わりました。いざ展覧会を開催してみると、これはどうしたらいいんだろうと色々考えることが多くて。ここは中庭にベンチが置いてあって休憩できるのがいいなあとか、いろんな場所に新たに設置された「点 音(おとだて)」という作品も面白いです! 耳と足を合わせたマークのあるプレートの上に立って「聞く」スイッチが入った瞬間に、普段とは違う耳の動きになりました。最近アウトプットが多かったので、久々にアート作品をインプットできて刺激をたくさんもらいました。
東京都現代美術館には、10年以上前に「大竹伸朗 全景 1955-2006」展を見にきたことがあります。きっと美術館に頻繁に足を運びたい時期だったと思うんですよ。今回の個展で、10年かけて集めた自分の髪の毛で作った作品を展示したので、なぜ髪の毛をとっておいたのかってよく聞かれるのですが、これがきっかけかもしれないです。きっと大竹さんの影響が個展のどこか一部にはなっていると思いますよ。
東京都現代美術館 中庭
展覧会で作品を見ていると、すぐに自分が作りたくなって胸の奥がゾワゾワしてくるんです。絵を見ても立体を見ても、「あー、こんなのやりたい!」って気分がオーバーヒートしてくるのかな。よく「急にアイドルがアーティストを気取っちゃって」とかネットで書かれることもあるし、自分でも思っていたんです。でも今回、倉庫を調べてみたら10代の頃の絵があって、アイドル誌で絵の連載もしていたので、キャリアは30年くらい。ポッと出じゃなかったんです(笑)。子どもの頃から気がついたら教科書やノートに落書きしていて、それが机になり、スケッチブックに描いてみたらすごい描きやすくて。そこからもっと大きいのに描きたくなって、仕事の合間にドラマやバラエティの現場にあった段ボールに描き始めました。キャンバスに描き始めたのも30歳位から。いわゆる美術教育を受けていないから、雑誌の切り貼りをやっていたら「コラージュもやるんですねって」って言われて、コラージュっていうんだと最近知りました(笑)。
アーティストとしても活動するようになって、横尾忠則さんからいただいた言葉が、本当に今の僕の力になってくれています。「グラフィックデザイナーから画家に転向した自分はさんざん言われてきたし、君もいろんなこと言われると思う。でも絵を描きたいという思いをそのまま描きなさい」と。あのタイミングでこの話を聞けていなかったら、こんなに勢いよく個展とかやれてなかったかもしれないです。
僕にとってアートは、自分を表現できる場所です。音楽や芝居は、監督やスタッフとかみんなで作っていくものですが、アートは最初から最後まですべて自分で決めることができるので、それがすごく楽しい。三谷幸喜さんとよく一緒にお仕事やらせてもらっていますけど、三谷さんには表現できない香取慎吾が表現できるんです。人が僕を素材にするよりも全部OK出すし、NGもないですから(笑)。まだ「次」のことは考えていませんが、まだまだ見せたいものはたくさんあります。パリで初個展というだけで、「この人、この後どうすんだろう」って思っていたのですが、今度は劇場で個展をすることになって、僕が僕を超えて来たぞって(笑)。きっと次も、超えてくれると信じています。
来年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。僕はこの何年かパラスポーツを勉強してきているので、パラリンピックの開会式が人であふれるような式典になったらいいなと思っています。世界の注目が集まるこの機会に、今の日本の文化も伝えていきたいですし、僕も、その一部になれたら嬉しいです。40歳を過ぎて、あらためて日本の文化っていいなって思うんです。自分がもうちょっと早く日本の文化を知れたらよかったなと思うから、今の10代、20代の若い子たちには日本のアートも昔からの伝統も早く知れるといいよって伝えたいですね。
1977年1月31日生まれ。91年にCDデビュー。2017年から現代アーティストとして本格始動。2018年9月パリのカルーゼル・デュ・ルーヴル・シャルル5世ホールにて初個展「NAKAMA des ARTS」、2019年3月〜6月「サントリーオールフリー presents BOUM!BOUM!BOUM!香取慎吾 NIPPON 初個展」を開催。稲垣吾郎・草彅剛と共に日本財団パラリンピックサポートセンターのスペシャルサポーター、及び国際パラリンピック委員会特別親善大使に任命。150万人を超えるフォロワーを持つインスタグラム、オフィシャルブログ「空想ファンテジー」も更新中。