ピーテル・ブリューゲル2世 《野外での婚礼の踊り》 1610年頃
Pieter Brueghel the younger, The outdoor Wedding Dance, ca. 1610, Private Collection

檀 れい × 髙城靖之(東京都美術館学芸員)
 

150年にわたり画家を輩出し続けた、ブリューゲル一族とは。

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  • 髙城  『ブリューゲル展』担当学芸員の髙城です。この展覧会では、「バベルの塔」等で知られるピーテル・ブリューゲル1世から、彼のひ孫世代まで約150年にわたる画家一族の系譜をご紹介しています。個人所有の作品が多く、ほとんどが日本初公開の作品です。
  • 檀 画家は「秀でた才能がある方がなるもの」と思っていたので、一族でというのは面白いですね。
  • 髙城 当時、画家は工房を構えて作品を作る親方であり、アーティストというより職人に近い部分がありました。そのため弟子となった息子が跡を継ぎ、作風も顧客も引き継ぐのはよくありました。ただ、ブリューゲル一族ほど長く続いた家系は非常に珍しいです。
  • 檀 跡を継ぐと言っても、それぞれの作家によって作風って違いますよね。
  • 髙城 ピーテル1世の息子2人の違いは顕著です。兄のピーテル2世は生涯にわたり偉大な父の作品のコピーを量産しましたが、弟のヤン1世はオリジナルの風景画や花の静物画で人気を集めました。
  • 檀 ピーテル2世はなぜお父さんの模写を続けていたんですか?
  • 髙城 一点物の作品は主に貴族が所有していて一般の人は見たくても見られない。それに当時は誰が描いたかより誰の構想かが重視されていましたから、コピーも今より価値が高かった。この《野外での婚礼の踊り》も、そういったニーズが背景にあったのでしょう。
  • 檀 ピーテル1世の原画と見比べると人の配置や服の色が違う部分も沢山ありますね!
  • 髙城 この絵は、版画をもとに複製されたとも言われていて、よく見ると前景で踊る人たちが反転している部分もあります。ちなみに中央奥の黒い幕の手前にいるのが花嫁です。
  • 檀 花嫁さんが小さくて、花婿が見当たらないのも不思議ですね。
  • 髙城 この絵は結婚する2人よりも、前景で踊っている人たちが主役なんです。ピーテル1世は農村に赴いて農民と一緒に生活し、その風俗を描いた画家でした。そのモチーフ自体が、宗教画がメインだった当時としては新鮮なものだったんです。
ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜

2018年1月23日(火)~4月1日(日)

16世紀フランドルを代表する画家、ピーテル・ブリューゲル1世に始まり、150年にわたって画家を生み出した、ブリューゲル一族。その系譜を辿りながら、一族の画家たちが手がけた風景画、風俗画、花の静物画などを通して、フランドル絵画の魅力に光をあてます。

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