楽宮下向絵巻(さざのみや げこう えまき)(部分) 青木正忠/画 文化元年(1804) 東京都江戸東京博物館所蔵

山本美月 × 杉山哲司(東京都江戸東京博物館 学芸員)
 

将軍や姫君が、街道をどのように旅していたのかを紐解く展覧会

    • 杉山  特別展「江戸の街道をゆく〜将軍と姫君の旅路〜」の担当学芸員 の杉山です。この特別展では、江戸時代の街道をテーマに、そこを将軍や姫君たちがどのように旅をしたのかを、すべて江戸東京博物館のコレクションで紹介いたします。
    • 山本  将軍や姫君は、何のために旅をしていたんですか?
    • 杉山  将軍は、天皇に会うために江戸から京都へ向かったり、日光東照宮へ参詣するために旅をしました。公家や宮家の姫君は、将軍家に嫁入りするために、京都から江戸へ向かいました。今なら新幹線だと2、3時間くらいですぐ行けますが、当時は20〜25日くらいかけて旅したといわれています。一方で、大名の行列は数千人規模といわれていますが、すべて大名の家臣だったわけではなく、臨時の人足(にんそく)を雇って行列を整えていたのです。長い行列で、沿道の人々を圧倒したことが想像できますね。
    • 山本  華麗な姫君の行列が気になります。
    • 杉山  今回の見どころの資料は、十二代将軍徳川家慶に嫁いだ楽宮(さざのみや)の行列を描いた絵巻です。全長約 24メートルある絵巻をすべて展示します。迎え入れる宿場の様子なども緻密に描かれていて、華やかな婚礼行列の様子がよくわかると思います。
    • 山本  ずっと駕籠に乗っていたら、酔いそうですね。
    • 杉山  酔ったと思います。姫君の場合、中山道を通っていくのですが、山道なので大変揺れます。今回、薩摩藩島津家の女乗物も展示しますが、総重量は約60キロ。人を載せて100キロくらいになる駕籠を、4人で担いで運んでいたんですよ。
    • 山本  姫君は、嫌な人とでも結婚しないといけないんですか?
    • 杉山  そうですね、幕府と朝廷で相談して決めます。和宮はもともと宮家の有栖川宮熾仁(たるひと)親王と婚約していたのを破棄されて、泣く泣く十四代将軍 徳川家茂に嫁いだのですが、最終的には仲睦まじかったらしいですよ。
    • 山本  当時の姫君も幸せかどうかって言われたら、わからないですね…。行列で旅をすることはいつなくなったんですか?
    • 杉山  江戸時代が終わり明治になると、鉄道の開通などにより、行列の旅は次第になくなります。しかし、江戸時代をだんだん懐かしむようになり、大名行列の絵を描いたり、各地でお祭りが行われるようになるんですね。最後に、本展覧会で注目していただきたいのがチラシなどでキービジュアルにしている「朱傘」(=朱色の傘)です。江戸時代は将軍や姫君など一部の高貴な人を絵画や文字などで直接的に表現することはできなかったため、絵の中でその存在を示す目印として朱傘が描かれているんですよ。
    • 山本  事前に勉強していたら面白いですね。朱傘がどこに描かれているのか探してみたいです!

特別展「江戸の街道をゆく〜将軍と姫君の旅路〜」

  • 2019年4月27日(土)〜6月16日(日)

     

    江戸時代、幕府によって整備された街道には、様々な人や行列が往来しました。なかでも将軍や姫君たちの行列は長大で、沿道の人々を圧倒し、幕府の権威を誇示しました。本展では、将軍の上洛と日光社参、姫君の江戸下向に関わる資料を通して、「江戸の街道」における旅路をたどります。

     

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