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2023年度に新たに開始されたアートマネジメント人材等海外派遣プログラムの内容や成果を広く共有する場として、2024年2月28日に、第1回となる派遣対象者全員が参加する派遣後の報告会が開催されました。
本事業では、若手アートマネジメント人材を短期で海外の芸術フェスティバル等に派遣し、先駆的な作品や創作現場に直に触れ、グローバルな視点から創造的な活動を推進、海外セクターとネットワーク構築・強化する機会を提供します。世界に通用する作品を生み出しその価値や芸術性を発信し、東京と世界をつなぐ役割を担う若手の、国際的な活動の第一歩となるよう後押しすることを目指しています。
報告会では、第1回公募でスコットランド・エディンバラに派遣された4名、第2回公募でタイランド・ビエンナーレ(チェンライ)、バンコクに派遣された2名、ニューヨーク・ブロードウェイに派遣された4名が発表を行いました。派遣先では、約1週間の滞在の間、主催者側で設定し必ず実施するベーシック・プログラムと、被派遣者自身がそれぞれの興味関心に応じてリサーチを行い、視察・関係者へのヒアリングなどの交渉・調整を行って実施するオリジナル・プログラムの2つに取り組みます。
本レポートでは、各々がプログラムに参加した目的や、各派遣地でのベーシック・プログラム/オリジナル・プログラムの内容、派遣の成果を中心に行った報告の内容をお届けします。
エディンバラ国際フェスティバル(英:Edinburgh International Festival)は、スコットランドのエディンバラで開かれる世界最大のパフォーミングアーツの祭典です。8月から9月の3週間にわたって開催され、オペラ、演劇、音楽(特にクラシック音楽)、ダンスなどの分野の世界一流のアーティストが公演を行います。
はじめに、全員で参加したベーシック・プログラムの内容が紹介されました。エディンバラ・フェスティバルと周辺の文化状況について体系的な知識を得る機会となるよう、ブリティッシュ・カウンシル・スコットランドのアート部門の責任者や、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティの副事務局長へのヒアリングを実施。さらに、舞台公演2作品を視察しました。
特にヒアリングでは、インフルエンサーを巻き込んだ宣伝方法や国内外から訪れる観客への具体的なサポートに関する話などを通じて、創造性は作品だけでなく運営側にも必要と考え、常に時代に応じた創造的なアプローチを模索し、実践している点が印象深かったとのこと。また、フェスティバルに携わる担当者の視野の広さ、明確なビジョンやそれを的確に伝える能力の高さなどが刺激となったそうです。続いて、各自がオリジナル・プログラムの内容や最も印象に残ったことを発表しました。
タイランド・ビエンナーレは、タイ各地を移動しながら隔年で開催され、多様な文化と豊かな歴史を持つ地方都市を舞台にした国際的な現代アートの芸術祭です。政府主導で行われ、第3回となる今回は最北部のチェンライで2023年12月から開催されました。
はじめに、2人とも参加したベーシック・プログラムの紹介がありました。タイランド・ビエンナーレのオープニングデイから数日間、主催者オーガナイズのレセプションや関係者向けのツアーに参加し、アート関係者とのネットワーキングを実施。また、国際交流基金バンコク事務所にて、タイ(主にバンコク)のアートシーンについてや、その他のアートフェスティバルに関するヒアリングなどが行われました。
特に、チェンライは文化的にも歴史的にも見所が多く、ツアーで会場を巡ることで元々チェンライにある、アーティストがデザインしたお寺を舞台にした作品など、アート作品と地域の文化遺産を万遍無く見ることができた点を面白いと感じたそうです。その後は各自のオリジナル・プログラムや、印象に残ったことの報告がありました。
世界で最も熱いエンターテインメントの中心地ニューヨークでの滞在は、「エンターテインメントビジネス」の魅力を、人々の生活・文化やブロードウェイ最先端のミュージカル等様々な観点から感じとり学ぶ機会でした。
まずは、ベーシック・プログラムの説明がありました。世界的な劇場街であるニューヨーク・ブロードウェイの全体像についての理解促進を目的として、現地の第一線で活躍する多方面の業界関係者との面会が実施されました。制作プロセスに関わる関係者はもちろんのこと、各被派遣者の興味関心に沿って、ブロードウェイの労働環境や制度、チケッティングのビジネス面・システム面での運用から広報・マーケティングまで、多角的なヒアリングが行われました。
ブロードウェイでは、プロデューサー、プロダクション、劇場、マーケティングなど各々の役割が細分化されている一方で、チケット販売員や清掃スタッフに至るまで舞台に関わる全ての人々の労働を守るユニオンや業界団体が存在、機能しているため、一人ひとりが誇りをもって携わり、業界が一体となって連帯し、価値の形成・底上げと訴求を行っている点が4名全員の印象に残ったそうです。続いて、各々のオリジナル・プログラムの発表がありました。
以上、報告会第1部では、各々の派遣先での活動内容を発表して貰いました。若手が海外に触れる機会を提供したいという事業主旨に対し、それぞれにしっかりと様々な経験をし、多くの知見や刺激を得ることができたことが伝わりました。後半では、第2部のラウンドテーブルの模様をお伝えします。後編:第2部ラウンドテーブルに続く
取材・文:アーツカウンシル東京 結城直子