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CCBTオープニングイベント「未来の東京の運動会」ほか、5組のアーティスト・フェローの取り組みを紹介

CCBTがオープンした2022年10月23日に、渋谷の小学校で開催された「未来の東京の運動会」

デジタルテクノロジーの活用を通じて、あらゆる人々が「創造する」力を発揮するための活動拠点として、20221023日に渋谷にオープンした、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]CCBTの活動テーマである「発見」「共創」「開発」「連携」という4つのミッションを体現するパートナーとして、2022年度は5組のクリエイターが「アーティスト・フェロー」として選出され、活動しています。

そのうちの1組、犬飼博士とデベロップレイヤーたちによって開所日にオープニングイベントとして開催された「未来の東京の運動会」のリポートとともに、そのほかのアーティスト・フェローの作品公開の予定などについてご紹介します。

参加者全員でアイデアを出し合う「運動会ハッカソン」

「未来の運動会」とは、ゲームクリエイターでeスポーツプロデューサーの犬飼博士さんが2014年から開始し、日本各地で行ってきたスポーツアートの共創プログラム。参加者が開発(デベロップ)&あそぶ(プレイ)を同時に行う「デベロップレイヤー」となって、新たな「運動会の種目」を開発し、みんなでプレイし、シェアするという、新しい運動会です。

CCBTアーティスト・フェローとして「未来の東京の運動会」を主導した犬飼博士さん

運動会本番前日の1022日(土)から23日(日)の本番直前までは、新しい運動会の競技を考える「運動会ハッカソン」と呼ばれるプログラムが行われました。これまでの「未来の運動会」プロジェクトを通じて育ったデベロップレイヤーたちや、運動会に先駆け9月に行われた共創ワークショップに参加した子どもや大人など、延べ約60名が参加。まずは、運動会当日にどんな競技を行うか、意見やアイデアを出し合います。

まずは、東京にどんな運動会があると楽しいかを一人ひとりが想像し、自由にアイデアを出し合う

「未来の東京の運動会」を想像して、それぞれが連想するワードを思いつくままに書き出し、参加者それぞれが気になったワードに星をつけて人気投票。人気のワードをさらに同じ系統でまとめていき、「AI系」「レーザー系」「東京系」などのキーワードを抽出し、参加者はどのキーワードに興味を持ったかで4つのチームに分かれます。そして「1競技20分以内で完結し、4チームで競い合ってできるもの」をベースに、新しい競技についてチーム内で話し合いが行われていきました。

テクノロジーに精通していない人でも、臆することなく意見が出せるように、先輩デベロップレイヤーたちが使ってほしいデジタルツールや手作りの品を持ち寄ってプレゼンをしたり、その場に用意された様々な道具を使ってみたりしながら、誰の意見も取りこぼさず、競技の仕組みやルール作りなどを行っていきます。

最後は、実際にみんなでその競技をプレイしてみて、ルールの問題点やもっと面白くするアイデアを言い合い、それぞれのチームが、みんなで新しい運動会の競技を作り上げていきました。

いよいよ「未来の東京の運動会」本番

そして、CCBTの開所日である1023日(日)、いよいよ「未来の東京の運動会」本番がCCBT近くの渋谷区立神南小学校の体育館で開催されました。約100名の参加者が4つのチームにわかれ、前日にみんなで作り上げた競技をプレイしていきます。

競技のひとつ「人間失格!?―AIをだませ」は、犬飼さんと同じくCCBTのアーティスト・フェローのひとりでもある木原共さんも参加し、チーム内で考案した、人間を認識することができるAI搭載カメラの機能を逆手にとった競技。

AIに“人間”だと判定されずにゴールを目指す「人間失格!?―AIをだませ」を主導した木原共さん

カメラに「人間である」ということを認識されないように、カメラ前に設置されたカゴからボールたくさん取ったチームが勝つ、という競技です。用意されたさまざまなグッズを使って顔や体を隠したり、体を折り曲げるようにして歩いたり。大人も子どももいかに“人間と認識されないか”を工夫しながら、思いもよらない動きを編み出していました。

さまざまな道具を使って「人間」とバレないように、カメラ前のボールを奪いにいきます。

ほかにも、チーム対抗戦で、相手方の東京タワーにボールを投げて倒し、倒れたらみなでボールを集め、その数を競う「東京タワーを守り隊」。

ガード役の顔を守る籠が不思議な雰囲気を醸し出し、盛り上がりを見せた「東京タワーを守り隊」

米俵や巨大なボール、サイコロなど4つの大きさの異なる物を回してポイントを稼ぐ「ころがし魂」。物には、回転数を数えるセンサーつきコンピューターが入っており、各物の回転数を掛け算し合計数を競います。反対に回すと減っていったり掛け算を考えたりしながらプレイするのが特徴です。

デジタルツールを埋め込んだ様々な大きさの物を回してカウントを稼ぐ「ころがし魂」

機械から出される数々のレーザーの光に当たらないように、屈んだりジャンプをしたりして障害物を運んでリレーし、ゴールまでの時間を競い合う「Mission Impossible―レーザーをかわして、ゴールせよー」など、共創ワークショップでつくられたテクノロジーをもとにハッカソンで生み出された新しい競技が行われました。

様々な高さのレーザーをくぐりぬける「Mission Impossible―レーザーをかわして、ゴールせよー」

すべての競技が行われる前には、競技を開発したチームが自らルール説明を行いますが、そのルールに疑問があったり、よりよくするアイデアを持っていたりする他チームは、ルール変更を提案できる「デベロップレイカード」を使うことも可能。

「ちょっと待ったー!」という声を響かせながら、みんなで意見を交換しあい、より楽しめる競技を作ろうと全員で運動会を共創していく様子が印象的でした。

参加者の声
中川聖菜ちゃん(9歳)

運動会に参加した中川聖菜ちゃん(9歳)は「学校の運動会もみんなで協力はするけど、この運動会はもっと自分が参加をしているという感じがしました」と、自分も主体的に関わり、みんなで作り上げる喜びを体感してくれたようです。

また、今回初めて参加をしたという大学院生の伊藤大樹さん(23歳)は「アナログな運動会という中にテクノロジーを落とし込むということを僕自身がこれまで考えたことがなかったので、とても新鮮な体験でした。趣味でゲームをプログラミングしているのですが、この運動会をきっかけに同じチームのメンバーとゲーム開発や創作活動などについての話もできたので、このつながりを大切にしていきたいと思います」と語ってくれました。

大学院生の伊藤大樹さん(23歳)

そして、CCBTアーティスト・フェローであり、スポーツテック共創ワークショップから運動会当日まで参加した木原共さんは、実際に運動会で子どもたちが動く様子を見て発見もあったといいます。

CCBTアーティスト・フェローのひとりであり、競技のひとつ「人間失格!?」でAIを持ち込んだ木原共さん

「子どもの予想もできないような動きをAIはなかなか認識できず、なぜか子どもを“ラケット”と認識していた場面があったんです(笑)。AIは一回学習をしても完璧ではなく“穴”があって、そういうバイアススポッティングも見つけられました。実はこれはとても大切で、例えば自動運転の車に搭載されているAIカメラが、子どもの不意な動きを認識できなければとても危険なことになるということを考えるきっかけになります。認識とアクション、つまり判断して実行することをすべてデジタルに任せていいのかという疑問も、実はこの競技からは見えてきます。僕は遊びの世界から社会に新しい視点をもたらす「思索玩具」というシリーズを製作しているのですが、今回の『人間失格!?』はそのひとつともいえるでしょう。アートが日常への問いになるということをみんなで体験できたのかもしれません」

参加者の感想を聞くと、まさにCCTBがミッションとする「発見・共創・開発・連携」を体現した運動会になっていたことがわかりました。人々がつながり、アートとテクノロジーが出会うことで創造する力を生み出す場となるCCBTの今後の活動にぜひご注目下さい。

取材・文:知野美紀子
撮影: 佐藤基

2022年度アーティスト・フェロー5組による作品発表・展覧会を順次開催!

CCBTのコアプログラムのひとつ『アート・インキュベーション・プログラム』では、2022年度のアーティスト・フェローとして〈共創モデル〉〈公募プログラム〉の5組のクリエイターを選出。制作費として1,000万円を上限にサポートし、制作スペースや機材の提供、テクニカルサポート、メンターをはじめとした専門家からのアドバイスなどを通じて企画の具体化を行ってきました。

10月24日のプレス説明会に登壇したアーティスト・フェローとロゴやコンセプトムービーなどを担当したクリエイティブチームのみなさん

「恵比寿映像祭2023」(2023年2月3日~19日)で、東京2020オリンピックの開会式のドローン演出を手掛けた野老朝雄+平本知樹+井口皓太による新作《FORMING SPHERES》が公開されたのを皮切りに、フェローによる作品や展示会が続々と開催されています。

2月26日(日)には、犬飼博士らが登壇し「未来の東京の運動会」本番までの一連の活動を追ったドキュメンタリー映像を紹介する『未来の東京の運動会ムービー 完成披露プレミアム上映会』、3月には、〈公募プログラム〉で選ばれた3組のクリエイターによる、人間がAIと競争・共創するオリジナルゲームを活用した展示やワークショップ、渋谷の街を舞台にしたARによる展覧会、都市の変化をスケートボードの視点で切り取る映像シリーズの新作などを発表していきます。ぜひ、CCBTから発信される新たなアートとテクノロジーによる多様な表現を目撃しにきてください。

共創モデル

野老朝雄+平本知樹+井口皓太「FORMING SPHERES」

インスタレーション作品の屋外展示と、創作プロセスを公開する展示を「恵比寿映像祭2023」CCBTで同時開催

※本サイト内にて、本プロジェクトを取材した野老朝雄さんインタビュー記事を掲載!

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【インスタレーション展示】
2023年23日(金)~219日(日)
「恵比寿映像祭2023」オフサイト展示
会場:恵比寿ガーデンプレイス センター広場

【関連展示】プロトタイプ公開
2023年27日(火)~216日(木)
会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT

犬飼博士とデベロップレイヤーたち「未来の東京の運動会」
運動会本番までの一連の活動を追ったドキュメンタリー映像を上映。

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【未来の東京の運動会ムービー 完成披露プレミアム上映会】

2023年226日(日)14:0016:00

登壇:犬飼博士、(株)MODOCチーム(企画制作会社)、山城大督(美術家・映像作家)

会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT

公募プログラム

Tomo Kihara + Playfool「Deviation Game ver 1.0」
AIと人間の相互進化のあり方をゲームを通して探求するプロジェクトの展示とワークショップを開催

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【ワークショップ「Deviation Game AIと競争&共創する」(全6回)】

対象:小学4年生以上 定員:各回10名(事前申込/先着順)

2023年34日(土)5日(日)10日(金)12日(日)17日(金)19日(日) (金曜日:17:0018:30、土・日曜日:13:3015:00

会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT

【 デヴィエーション・ゲーム展 ver 1.0 ー模倣から逸脱へ】  

2023年3月4日(土)~321日(火・祝)  26日(日)まで会期延長  13:00~19:00 ※月曜日休館

会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT

オープニングトーク「最新のAIがゲームとアートに与える影響について」  

2023年35日(日)16:0018:30

登壇者:Tomo Kihara+Playfool、谷口彰彦(メディアアーティスト)、久納鏡子(アーティスト、アルスエレクトロニカ・アンバサダー)

浅見和彦+ゴッドスコーピオン+吉田山 展覧会「Augmented Situation D」
国内外8組のアーティストによる渋谷の街を舞台にしたAR展覧会

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【展覧会「Augmented Situation D」】  

2023年310日(金)~321日(火・祝)

会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]、渋谷区内施設

協力:ゲーテ・インスティトゥート東京、STYLY

後援:渋谷区

関連ワークショップ「ARと合唱する!声楽ワークショップ」

2023年212日(日)11:0014:00

対象:小学1年生~6年生 定員:20

会場:渋谷 7thFLOOR

【関連ワークショップ「自分の作品が街中に出現!ARコンテンツ制作ワークショップ!」】

2023年3月18日(土)14:00~15:00

講師:Discont(「AUGMENTED SITUATION D」テクニカルディレクター)、浅見和彦(CCBTアーティスト・フェロー) 定員:18名

会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

【アーティスト・トーク「XR拡張の谷のクオリア」】

2023年3月18日(土)16:00~18:30

講師:浅見和彦+ゴッドスコーピオン+吉田山、ほかゲストを予定 定員:30名

会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]

■SIDE CORE「rode work ver. under city」
都市の変化をテーマにした映像シリーズ、待望の新作。都市の風景と地下空間を切り取る、映像インスタレーション作品

【インスタレーション展示 「rode work ver. under city」 】 

2023318()326() 14:00~22:00 ※推奨時間 18:00〜22:00

会場: 目黒観測井横 空地(〒153-0042 東京都目黒区青葉台3丁目6)
【関連展示「under city desk」】
2023年3月21日(火)~3月26日(日)
会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT

【トークイベント「unde city meeting」】

2023年3月23日(木)19:00~20:30(開場 18:30)
登壇:SIDE CORE、森田貴宏 (プロスケーター/映像監督)、山川陸(アーティスト、Transfield Studio 共同主宰/山川陸設計 代表)

会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT

アーティスト・フェローと作品制作に伴走したメンターが登壇し、本年度の活動を振り返る報告会を開催。5組のクリエイターによる活動発表を行います。

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【日時】2023年321日(火・祝)15:0019:00

【会場】シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT] 事前申込不要

【プレゼンター】
犬飼博士(未来の東京の運動会)、平本知樹(FORMING SPHERES)、Tomo Kihara + PlayfoolDeviation Game)、浅見和彦+ゴッドスコーピオン+吉田山(Augmented Situation D)、SIDE CORErode work ver. under city

【登壇者(本プログラムメンター)】
いすたえこ(アートディレクター・グラフィックデザイナー)、岩屋民穂(グラフィックデザイナー)、 齋藤精一(パノラマティクス主宰)、細川麻沙美(札幌国際芸術祭事務局統括マネージャー) ほか

■施設概要
【名 称】シビック・クリエイティブ・ベース東京[
CCBT
【場 所】東京都渋谷区宇田川町3-1 渋谷東武ホテル地下2階
【時 間】13:0019:00
【休館日】月曜日(祝日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始
※そのほか保守期間等の休館あり
【主 催】東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団
【公式サイト】https://ccbt.rekibun.or.jp/