東京都歴史文化財団で働く「中の人」たちに焦点をあて、仕事やひとを紹介するシリーズ。アーツカウンシル東京 TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト(以下、スマカル)担当の仕事を紹介します。後編は福井久美子(ふくい・くみこ)さん、小林愛恵(こばやし・まなえ)さん、田口充奈子(たぐち・みなこ)さんに、これまでの経歴、働くうえで大事にしていることなどを聞きました。
※部署名と肩書は取材当時のもの
(前編はこちら)
財団職員として10年目、入団前からも学芸員としてのキャリアを積んできた小林さん。非常勤職員や少人数での施設運営なども経験し、財団入団後は、江戸東京博物館の常設展示室担当の部署、コロナ禍の江戸東京たてもの園、江戸東京博物館の収蔵品を管理する部署などに配属され、奮闘し続けてきたそうです。現所属に来る前は、江戸東京博物館で「大規模改修に向けて収蔵品などの大移動や、部署が管理する収蔵庫を含めたたくさんの部屋の片付けをしながら、デジタル化作業本格化に向けた準備を並行して行っていました」と、すでにデジタルアーカイブに携わる業務に就いていたと言います。
「以前の職場の放送局や通信社で、ニュース映像のアーカイブ業務に携わったことが、デジタルアーカイブに興味を持ったきっかけ」と田口さん。その後財団が運営する施設に携わる中でアートの面白さに出会い、さらに次の職場では伝統芸能に関わる公演記録や写真などの貴重資料のデータベースづくりに従事。「デジタルアーカイブをもっと勉強してみたい」と思い、スマカル担当の募集に応募しました。
「資料に対峙する時間は変わらず楽しいひとときです。一方でここでの仕事はすべてが新しいチャレンジ。これまでは所属する館や部署で完結する仕事がほとんどでしたが、今は各館との連携がなくては何も進みません」と田口さん。できる限り現場に出向き、コミュニケーションを取るようにしているそうです。
美術大学でメディアアートを学び作品制作をしていたという福井さん。「その後印刷会社に就職し、ある美術館の展示室のデジタルアーカイブを制作しました。それが私のアーカイブ人生のはじまりです。」と、現在につながるスタート地点を振り返ります。
その後ギャラリーや博物館などに勤務する中で、下絵や原稿など、作家が手元に残している資料の重要性に気づきました。今もライフワークとして作家の資料アーカイブに携わっているそうです。「膨大な量の資料を扱うために大事なのは、視点を引いて俯瞰すること。そのためには一つの資料にあえて専念せず、複数の資料を同時に扱うことも必要」と福井さん。美術、歴史、民俗、音楽、建築と多岐にわたる資料を扱うスマカル担当にぴったりの人材と言えそうです。