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大谷郁 OTANI IKU
事業係 主事 / 2020年入団
常勤契約職員 / 学芸職
※2021年当時
ラーニングという
美術館の役割に
惹かれました。
もともと財団との関わりはあったんです。東京都美術館と東京藝術大学とが連携して進めている「とびらプロジェクト」という事業の運営に、藝大の職員として従事していました。この事業は、学芸員などの専門家だけではなく、さまざまな経験値を持つ方が美術館の活動に関わることで、美術館がより多様な視点を持って社会と関わり、いろいろなつながりを生み出していく場となる、そういう美術館の新しい在り方をつくっていこうという取り組みです。その過程で実感したのが、「ラーニング」という美術館の役割の奥深さ。今度は美術館の中に籍を置いてラーニングについて深めていきたいと考えていたときに、庭園美術館の教育普及事業担当の募集を見つけたんです。
学びや発見の仕掛けを作る。
教育普及事業に期待されている役割は大きく言うと、美術館と人々との回路づくりです。多くの人に興味を持ってもらい、より深い学びや発見のある企画、また来たいなと思ってもらうためのプログラムを考え、実施していく。参加者同士が関わることでさらなる学び合いが生まれたりもします。展覧会の内容に関するワークショップのほか、障害のある方や赤ちゃんのいる家族をターゲットにしたツアーなど、これまでもさまざまな企画を実行してきました。企画書を書いたり、広報担当と打ち合わせをして告知文のテキストを書いたり、ときにはワークショップで使う大量の材料を黙々と手作りすることも。自分自身で進める仕事の幅が広いのは大変ですが、面白くもあります。
過去のつながりも、
大切な財産になっています。
館の職員はもちろんですが、障害のある方向けのツアーを実施したときは外部のNPO団体とも連携しました。前職の「とびらプロジェクト」でさまざまなプログラムを実践してきた経験のある方々が、今は自分たちで団体を立ち上げて活動していたりするので「庭園美術館で一緒にツアーをやってくれませんか」と依頼したり。藝大時代のアーティストの先輩をワークショップの講師に呼んだこともあります。過去の人脈にはものすごく助けられていますね。私の人脈では足りないときは、ほかの学芸員に相談したら大体なんとかなります(笑)
さまざまな専門家が
いるからこそ、
学べることが多いんです。
東京都歴史文化財団は、美術館だけじゃなく博物館やホールも含めたさまざまな文化施設の集合体。一緒に働いている職員の中には、江戸東京博物館や現代美術館での勤務経験がある方もいます。それぞれ特徴ある館の事情や知見に触れることができるのは、財団ならではの魅力ではないでしょうか。私はずっと美術の世界にいて現代アートを中心に学んできましたが、今の上司はもともと歴史専門で、江戸東京博物館で長く働かれていた方。博物館ならではの古い史料の扱い方の知見など、すごく勉強になっています。まだまだ学ぶことばかりですね。
つまらなさそうに
していた子の、
真剣な表情を見た瞬間。
ワークショップに参加される方は、もともと美術に興味があり積極的な気持ちでいらっしゃる方が多いです。でも、例えばスクールプログラムとして学校の授業の一環で来館する子供たちの中には、「つまらない」と積極的になり切れずに来る子がいる場合もあります。そんな子供たちに、「作品を見るって面白い」「美術館にまた行ってみたいな」と思ってもらえる仕掛けや、体験として深く残るような機会を、学校の先生と協力してどう作るかが私たちの腕の見せ所。最初はつまらなそうにしていた子が徐々に真剣な表情になっていく姿や、自分で見つけたことを誰かに教えたくなって楽しそうに話してくれたときは本当に嬉しい。何よりも誇りを感じる瞬間です。
※取材時に限り、マスクを外しています。
上司から見た大谷さん
財団全体の教育普及事業の
中核を担う人材に。
庭園美術館だけでなく、間違いなく財団全体の教育普及事業の中核を担える人材になると期待しています。当面は現在の職場で実績を確実に積み上げてほしいですが、さまざまな方面にアンテナを張って、これまでにない新しい視点や問題意識で過去の財団にはないプログラムを生み出してほしいですね。また、とても柔軟な思考ができるので、将来仮に財団のほかの職場に勤務することになっても、その施設の特徴や役割を理解した事業を展開できると思います。美術館の教育普及に関して、可能なかぎり外部に向けても発言をしていってほしいと思います。
東京都庭園美術館 教育普及担当係長
板谷敏弘