今回は、西武新宿線上井草駅から徒歩7分のところにあるちひろ美術館・東京をご紹介します。
8月20日(日)まで、「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」と「奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人」が同時開催中です。
ちひろ美術館・東京にはぐるっとパスで入場できます。
※この展覧会は、すでに終了しています。
「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」などのアニメーション映画の監督として知られる高畑勲が、創作のうえで深い洞察を得てきた画家のひとりが、いわさきちひろです。
この展覧会では、高畑の視点からちひろの絵の魅力を新たに発見し、今までにない演出でちひろの絵の世界を体感できます。
展示室4の数ある展示作品の中で、3点の絵が拡大されて展示されています。
なぜ、絵を拡大して展示したのか、高畑のことばをご紹介します。
「これはただのアトラクションのつもりではないのです。拡大された絵をもうひとつの「原画」として、まじめに見つめ、対峙していただきたい。すると、いままで見てはいても見えていなかったものが、いろいろと見えてくるはずです。
(中略)…ときには絵の中に入っていけるかもしれません。」
この作品は、約6.4倍の大きさで高精細に拡大して展示されています。
展示室4では、絵本『戦火のなかの子どもたち』(岩崎書店)の原画の展示と、3点の拡大された絵の展示と、絵本『あめのひのおるすばん』(玄光社)の原画や少女のイメージや雨の情感を探求した習作やスケッチを展示した3つのパートから構成されています。
最初の展示は『戦火のなかの子どもたち』の作品が並びます。入ってすぐのところにあるのは防空壕をイメージした展示。
奥には絵本『あめのひのおるすばん』の作品が並んでいます。
額に入れずにそのままトリミングされていない作品を展示することで、見る人に能動的に見てもらいたいという思いがあるとのことです。
みなさんは茂田井武(もたいたけし)という画家をご存知でしょうか?
1908年東京日本橋生まれ。戦後日本の復興期に絵本、絵雑誌などの仕事で活躍した童画家です。
現代美術のアーティストとして世界的に活躍する奈良美智も茂田井の絵に心ひかれるひとりです。
今回は、奈良美智が今も「新しい」と感じる茂田井武の作品を選び、展覧会を構成しています。
48歳で早逝した茂田井武と、今に活躍する奈良美智が茂田井の死後約60年を経て、現代にコラボレーションします。
1930年、21歳の春に、茂田井は鞄一つで欧州放浪の旅に出ます。滞在先のパリやジュネーブで、夜毎心に留まった光景や人物、夢の断片を絵日記風に描きためた画集「Parisの破片」や「続・白い十字架」が展示されています。
この他に、戦時中の日記や、夢から生まれた絵物語、子どもの落書きのある絵など、折々の茂田井の内面が色濃く表れた作品が選ばれています。
この作品は小川未明の「野ばら」「月夜とめがね」等の童話17話が収録された童話集の表紙絵として描かれました。
茂田井の描く絵には、その素朴さはもちろんのことですが思わず心ひかれてしまう独特の魅力があります。
ぜひ、みなさんにも奈良美智セレクションの茂田井の作品たちを実際にご自分の目で楽しんでいただきたいです。
ここに茂田井の絵の魅力を表現した奈良美智のことばを引用します。
「茂田井さんの絵をみると
おじいさんの子どものころの写真をひきだしから見つけたような
忘れかけていた宝物に出会ったような感じになる。」
閑静な住宅街に佇むようにあるちひろ美術館・東京は、一度は訪れてみたい素敵な美術館です。お庭を眺めながらカフェで軽食やお茶をいただくこともできます。
ミュージアムショップも充実していて、思わず記念になにか手に入れて帰りたくなります。
まだ行った事のない方はもちろん、行かれた事のある方も、この見ごたえある展覧会の会期中にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
※このブログ記事は、2017年6月に掲載されたものです。
会場:ちひろ美術館・東京
http://www.chihiro.jp/tokyo/
「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」
「奈良美智がつくる 茂田井武展 夢の旅人」
会期:2017年5月19日(金)~8月20日(日)
※この展覧会は、すでに終了しています。
休館日:月曜日(祝休日は開館し、翌平日休館)
※8月1日(火)~20日(日)は無休
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:大人800円、高校生以下無料
ちひろ美術館・東京には、ぐるっとパスで入場できます。