今回は2017年1月15日(日)まで、「武士と印刷」展を開催中の印刷博物館をご紹介します。
※この展覧会は、すでに終了しています。
印刷博物館は飯田橋駅から徒歩13分ほどのところにあります。
トッパン小石川ビルに入って地下に降りると印刷博物館の受付があります。
ぐるっとパスもこちらで販売しています。
企画展示室の入口。「武士と印刷」展は、2部構成です。
第1部は「武士(もののふ)たちの系譜」と題し、洋画家・悳俊彦氏のコレクションから江戸時代の庶民に大人気だった歌川国芳の武者絵を中心に約150点が展示されます。(*会期を6期に分けて展示。)
国芳の武者絵を通して、江戸時代の庶民が持っていた武士のイメージを探っていきます。
第2部は「武士による印刷物」です。
戦国時代、江戸時代を通じて、約70人の武士が刷らせたおよそ160点の印刷資料が展示されています。
江戸時代は多くの武士たちが個性的な印刷物を作らせていました。
第2部のスタートには日本地図に展示されている印刷物の地域が示されています。
自分のゆかりの地方の藩の印刷物に注目して見てみると、より身近に感じられるかもしれません。
第2部は時代順に6つのパートで構成されています。
江戸時代に印刷物をつくらせた人物の代表格といえば徳川家康です。
江戸幕府初代将軍として、武断から文治へと導きました。その後も多くの武士たちが印刷物をつくらせ、徳川家康が目指した文治政治を体現していきました。
この展覧会には重要文化財が4つ展示されています。その内のひとつは徳川家康が作らせた《駿河版銅活字》です。
家康は、朝鮮伝来の銅活字にならって新鋳した《駿河版銅活字》を使って、『大蔵一覧』と『群書治要』を印刷させています。
「水戸黄門」として有名な水戸藩主・徳川光圀も多くの印刷物を残しました。『大日本史』は光圀が命じて編纂させた日本の歴史書です。
光圀の存命中には完成せず、編纂は後の世代にまで引き継がれ、水戸学の源流として幕末の勤皇思想に大きな影響を与えるに至ります。
また、『大日本史』以外にも20点(タイトル)以上の印刷物をつくらせており、他の藩主と比べその数は際立っています。
戦国時代から幕末にかけて、約160点の印刷物が並ぶ光景は壮観です。中でも、図版に特徴のあるものはやはり目をひきます。
農業奨励のために編纂されたもので、農具や農作業の様子などが多くの図版を用いて詳しく記載されています。
雪の結晶を観察して図版にしたものですが、その学術的価値も高く評価されています。
雪の結晶ということで身近で興味を持って見ることができますし、その美しさ多様さにも心を打たれます。
展示の最後は、福沢諭吉の『学問ノス丶メ』で締めくくられています。
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という一文で有名な『学問ノス丶メ』です。
この展示を見ることで、武士による貴重な印刷物を目の当たりにできます。
さらに、印刷物が人に知識や思想を伝え広めていくとても大切な存在であることを、再認識させられました。
会期終了は2017年1月15日(日)までなので、みなさんも時間をつくってぜひ訪れてみてください。
「武士と印刷」展には、ぐるっとパスだけで入場できます。
※このブログ記事は、2016年12月に掲載されたものです。
会場:印刷博物館
http://www.printing-museum.org/
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(ただし1月9日は開館。12月29日(木)~1月3日(火)、1月10日(火)は休館)、年末年始、展示替期間
「武士と印刷」
会期:2016年10月22日(土)~2017年1月15日(日)
※この展覧会は、すでに終了しています。
入場料:一般500円、学生300円、中高生200円
印刷博物館には、ぐるっとパスだけで入場できます。
企画展開催時以外の入場料は異なります。