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【展覧会レビュー】「特別展 琳派400年記念 琳派と秋の彩り」展 山種美術館

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  • 美術館

恵比寿駅西口から徒歩約10分(駅前よりバスの運行も有り)、駒沢通り沿いに山種美術館はあります。

「特別展 琳派400年記念 琳派と秋の彩り」展を、10月25日(日)まで開催中です。
※この展覧会は、すでに終了しています。

みなさんは今年は琳派イヤーとよばれているのはご存知でしたか?
琳派の祖といわれる本阿弥光悦が京都洛北の鷹峯に“芸術村”をひらいてから今年で400年を迎えることから、これを記念し琳派をテーマとした展覧会が多く開かれ、そう呼ばれているのです。

山種美術館では、琳派と琳派に連なる美意識に着目し、秋を題材とする作品を多数揃えた展覧会を開催しています。
これからまさに秋真っ盛りのシーズンを迎えようとするこの時期、見逃せない展覧会のひとつです。

展示構成は以下の通り。
第1章:琳派の四季
第2章:琳派に学ぶ
第3章:秋の彩り

第1章:琳派の四季

展示風景

俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書) 《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》 山種美術館

琳派の祖、光悦と宗達による書と画が見事な調和を見せているこちらの作品。
光悦が好んだ歌人、西行が秋の夕暮を詠んだ歌が書かれています。鹿は秋に詠まれることの多いモティーフ。
秋をテーマとするこの展覧会のスタートに最もふさわしい作品です。

伝俵屋宗達 《蓮池水禽図》

続いて注目するのは宗達の《蓮池水禽図》。

蓮の葉から花芯、水鳥にいたるまで各所にたらし込み(※)の技法が用いられています。

※たらし込み
はじめに描いた墨が乾かないうちに濃度の異なる墨を加え、偶然できた濃淡やにじみを活かす技法。
琳派では宗達が用いたことに始まり、後の世代に継承されました。

展示風景

酒井抱一 《秋草鶉図》【重要美術品】 山種美術館

チラシや会場入口にも使われている、この展覧会の象徴ともいえる酒井抱一の作品。
月と秋草と鶉と楓の配置と調和が、全体的に秋を趣深く感じさせるとても魅力的な作品です。

琳派の自然描写の特徴には、草花を好んで描くことと、秋の情景を魅力的に表現することに長けている点が挙げられます。

鈴木其一 《牡丹図》 山種美術館

いかにも「琳派らしい」という表現はとっていませんが、地面に描かれた蒲公英など、草花を好んだ琳派の特色が表れています。

第2章:琳派に学ぶ


ここでは、近代・現代日本画に与えた琳派の影響を「装飾性と意匠性」、「水墨表現とたらし込み」という2つの観点から読み解きます。

小林古径の2つの作品を観てみましょう。

小林古径 《夜鴨》 山種美術館

古径の鴨を描いた作品ですが、尾形光琳《飛鴨図》(出品されていません)に描かれた鴨によく似ており、実際の琳派の作品から直接モティーフを引用した例と言えるでしょう。

小林古径 《狗》 山種美術館

同じく古径のたらし込みで子犬を描き、草花を添えたこの作品も、明らかに宗達の子犬を描いた水墨作品を下敷きにしていることが見て取れます。

山口蓬春 《新宮殿杉戸楓4分の1下絵》 ©公益財団法人 JR東海生涯学習財団

山口蓬春の作品からは、平面性を志向した画面構成や、装飾性、秋という季節感をモティーフとしていることなどから琳派への傾倒が感じられます。

小林古径 《秌采》 山種美術館

個人的には、古径の柿を描いたこの作品にふと心惹かれました。葉の金と枝の黒と柿の実のオレンジの色のバランス、シンプルな構図の中に秋の風情を醸し出しているこの絵に、現代デザインに通じるモダンさを感じました。

みなさまも会場内の沢山の作品の中それぞれに、ご自身なりの秋の趣を感じ取られることと思います。

第3章:秋の彩り

東山魁夷 《秋彩》 山種美術館

ふるきよき京都の四季の彩りと風情を伝える「京洛四季」の連作の1つで紅葉の名所として名高い小倉山の秋の風景が描かれています。

右 奥田元宋 《奥入瀬(秋)》 山種美術館

奥入瀬の紅葉の盛りを描き、「元宋の赤」と称される赤の色彩美が際立つ作品。

会場風景

会場内は作品の中に描かれたそれぞれの秋の情景に彩られて、観覧者を魅了します。

左 奥村土牛 《あけび》
右 小林古径 《栗》 ともに山種美術館


第2会場では「小さな秋」と題して草花や果物、小動物を描いた作品を紹介しています。

渡辺省亭 《葡萄》 山種美術館

葡萄と鼠は「豊饒と多産の象徴」なのだそうです。

小林古径 《猫》 山種美術館

凛とした猫の佇まいに思わず正面からじっと見据えて、しばし時を忘れます。

左から、山口蓬春 《錦秋》、同じく山口蓬春 《錦秋》、奥村土牛 《栗鼠》 ともに山種美術館

描かれた小動物と草花や果物、こちらからも様々な秋の風情を感じられます。

そして、展覧会鑑賞後の楽しみはまだまだあります。


ひとつは山種美術館の充実したミュージアムショップです。展覧会の想い出として記念に持ち帰りたい品々が販売されています。
作品の絵のパッケージ(写真中央)には栄太郎本舗の飴が入っており、140円切手を貼って郵送でき、贈り物としてもおすすめです。


もうひとつ、山種美術館といえば、展覧会とコラボした和菓子をお抹茶とともに楽しめる「Cafe椿」が有名ですね。
こちらの和菓子は、青山の老舗菓匠「菊家」に特別にオーダーした山種美術館オリジナルです。
今回の展覧会の特製和菓子はこちらです。


※このブログ記事は、2015年10月に掲載されたものです。

会場:山種美術館
http://www.yamatane-museum.jp/
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝休日の場合は開館し、翌日休館)

「特別展 琳派400年記念 琳派と秋の彩り」展
※この展覧会は、すでに終了しています。
会期:2015年9月1日(火)~10月25日(日)
入場料:一般1200円、大高生900円、中学生以下無料

ぐるっとパスのご利用で一般料金の200円引きになります。

 

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