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東京都写真美術館 E.M

面白さの“熱”を
多くの人に伝えられる喜びがある

事業企画課 事業第一係 主事/2015年入団
固有正規職員/学芸

Q1 今の仕事内容について教えてください

「鷹野隆大 カスババ -この日常を生きのびるために-」展のプレス向け内覧会で展示を解説(2025年2月)

収蔵作品の管理を中心に
業務内容は多岐に渡ります。

東京都写真美術館の学芸部門には写真と映像をそれぞれ担当する係があり、私は写真の係に所属しています。展覧会の企画・運営はもちろんのこと、約3万8,000点にも及ぶ収蔵作品のうち、写真作品の管理・保存・貸出、それから、収蔵作品検索システムの運営や館外への情報公開も担当します。収蔵作品の管理を軸に、付随する業務が多岐に渡る点が特徴です。現在(2025年)担当している「鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために―」は、総合開館30周年を記念した展覧会の第1弾で、当館の歴史をふまえつつ、新たな一面を見せることが求められるものでした。個人的にはチャレンジングな企画でプレッシャーも感じましたが、社会情勢等もふまえ、作家とも何度も議論を重ねることで、作家が現時点でかたちにしたいものを実現することができたと考えています。

Q2 入団のきっかけは何でしたか?

専門的な知識をわかりやすく、広く多くの方に発信する
仕事に就きたかった。

大学院では写真史を研究対象としていました。美術史上では写真は新しいメディアであり、国内の美術史研究の拠点となる研究機関においても、専門家は限られる状況にあります。研究自体はとても面白く、やりがいがあり魅力的ではありましたが、私は「難しいことをわかりやすく表現し、専門家だけでなく広く多くの方に発信する」ことに興味があり、学芸員になりたいという思いが強くて。当館でインターンを1年間経験し、その後映像の係に募集が出たのを見つけ応募しました。

Q3 展覧会の企画に際して心がけていることを教えてください

当館の収蔵品の独自性を伝えたいと思っています

展覧会の企画は、日頃の調査研究をもとに数年前から具体的な準備をおこなっています。学芸員は自身の専門性や経験、作家との関係性等をもとに企画立案を行うのですが、それだけではなく、時宜にかなっているか、当館がやるべきものか、といった様々な視点から総合的に判断し企画内容を検討する必要があります。また、複数の分野の有識者の方々から様々な意見をいただく機会を経て、企画を練り直したり、開催のタイミングを考えたりして実施に至ります。入団して最初に企画した展覧会は「マジック・ランタン 光と影の映像史」(2018年)。当館の映像の収蔵作品の管理を行う中で、歴史的にも貴重な19世紀の様々な光学機器・映像装置がコレクションされていること知りました。さらに調査を重ねると、国内外の美術館・博物館においても他に類を見ない充実したコレクションであることがわかり、専門家の協力も得て展覧会の開催に至りました。展示を通して、自らが面白いと感じた「マジック・ランタン(幻燈)」から現在の「プロジェクター」に至る映像の歴史を、熱量をもって伝えられたのではと、今でも特に印象に残っています。

Q4 財団で働く魅力を教えてください

力を発揮できるフィールドがたくさんあるところ。

自分の得意なことは、コレクションの背景を調べて伝えることです。当財団には複数の美術館・博物館がありますので、東京都コレクションとして、他館と連携することで、自分の研究の視点が広がるかもしれないと、ワクワクする気持ちも大きいです。どんな場所であれ、収蔵品の魅力を伝えることに尽力したいと思っています。一方でやはり時間をかけて専門性を高めていくことは、研究を深めるという意味では重要なことです。今後も当館ならではの作品・資料を活かし、国内外に向けて発信を続けていきたいです。

Q5 学芸員を目指す人にアドバイスをお願いします

あらゆる仕事が自分の知見を広げてくれる。

学芸員の採用というのは、やはり数が限られています。とにかくトライし続けることが大事ではないかと思います。もちろん、自分の志望通りのポストで働けることがベストではありますが、インターンを経験してみてもいいし、希望に近いポストがあれば、まず働いてみるというのもいかがでしょうか。どんな仕事でも、自分の知見が広がるきっかけになると信じていますし、さまざまな経験が自身の糧になると思います。私も、専門の写真ではなく映像から入って現在のポストにたどり着きました。今では映像と写真、両方の歴史に面白さを感じていて、両者が専門分野だと思っています。二つの分野で働いたことで、自分の引き出しが広がりました。

自身が思い描いている理想だけでなく、状況に身を任せてみたり、各分野の視点を粘り強く自分の中で結びつけたりすることで、想像以上の道が開けることがあると思います。